原子力発電のゆくえ

2011年4月24日(日)
原子力発電は「国策」!!
これは、12年前、私の質問に対して東海村原発PR館の館員が発した言葉だ。

【東海村原子力発電所見学】
1999年5月下旬、私は、東京電力が企画した「原子力発電所見学バスツアー・参加費1000円」に応募して、茨城県東海村の原発PR館で館員から原子力発電の説明を受けていた。私は、以前から、原発は安全であり、ローコストでエネルギーを効率よく生み出すシステムであると思っていた。しかし、ソ連のチェルノブイリ事故、アメリカのスリーマイル島事故などを見ていて、ある疑念が湧いてきたのだ。なぜ、東京電力は首都圏に原発を持たないのか? 首都圏に原発を作ると、安全性のコストがとてつもなく高くなるのではないか? この疑問を、最後の質問コーナーで、館員にぶつけてみた。
10年以上前のことなので、正確ではないが「東京湾に原子力発電所を作ったらどの程度のコストアップになるのか」という意味の事を言ったように記憶している。すると説明の館員氏は語気を強めて「原子力発電は安全なんです、これは国策だ」と言うなり、質疑を打ち切ってしまったのである。

【原子力発電の原理的危うさが明らかに】
3月11日、福島第一原発では地震によって発電は緊急停止したものの、津波によって瞬時に冷却系統が失われ、残存する崩壊熱によって燃料棒が損傷し、水素爆発が起こり、放射性物質が外部に飛散するという深刻な事故が進行中である。原子力発電を停止するには、制御棒を挿入すればよいが、その後、長期間にわたり、崩壊熱を取り去るため「冷却をし続けなければならない」ことが、白日の下にさらされてしまった。原子力発電とは、発電を停止するためにはスイッチを切った(制御棒を挿入する)だけではダメ、その後、冷却水を循環させる動力が必要という『原理的に危ういシステム』だった。とても、安全性投資云々の話ではないのである。
当時、原発PR館で説明した館員氏は、原子力発電の原理的欠陥を理解していて、それ故、日本の中枢部や人口密集部には作れない事を認識していた可能性がある。いや、政府の意志として、「原子力発電は原理的に危ういものだが、国民生活や産業成長のため大量の電力は必要なので、過疎地域にお金をつけて引き受けてもらう。雇用も創造できる。」ということだったのではないか。これが、「原子力発電は『国策』」という意味だったのか!!
現在、福島では、放射能汚染を避けるために、10万人規模の住民が避難を余儀なくされている。もし、東京湾(豊洲)に原発があると仮定した場合、20km圏、30km圏を下図に示した、山手線は全部この範囲に入り、福島型原発事故が起こったら東京大混乱になるだろう。とても東京には原発は作れないということになる。
20km,30km圏の地図は、Google Mapsから切り取り、Photoshop elementsで加工したものを、ここに置いていましたが、このような使用法はGoogleマップでは推奨されていないことが分かりました。
ウエブを検索したところ、任意の点から同心円を描くGoogle Maps APIがありましたので、これを利用する事に致しました。20km,30km圏の地図、外部サイトを参照。

【原子力発電は続けられるのか?】
原子力発電の信頼が大幅に低下した現在では、日本の何処においても、原発の新増設は困難のように思える。では、現在稼働中の原発は、どうすべきなのか? 即刻、停止すべきか、安全装置を幾重にも装備して発電継続か? 原子力産業で生計を立てている人々にとって、原発廃止をいいにくいのが実情だろう、原子力発電所を持つ自治体にしても、原子力交付金は魅力だろうし、雇用も大切である。表だって原発廃止はいいにくいのではないか? せいぜい安全バックアップ体制の充実要求くらいか?
福島原発事故は現在進行中であるが、解決にかかる費用や避難住民への賠償は巨額(数兆円以上)になると思われていて、財源捻出のため、東京電力では給与の20%カット、賞与の大幅削減、資産の売却等をせまられている。一方、他の電力会社は、じっと事の成り行きを見つめ、自社のリスク管理を始めていると思われる。つまり、いくら国策とはいえ、「原理的に危うい原発を押しつけられ、一旦事故が起これば、会社が空中分解しかねない危機的状況に陥る」ことは避けるべきという、いわば、市場原理が働くものと思われる。他の電力会社の考え方を見るのに丁度よい指標がある、「現在定期検査に入っている原発が再稼働されるかどうか」に注目しよう。「原発廃止」か「装備を充実して運転継続」かベクトルがどちらに向かうのか、この1,2ヶ月で明らかになるだろう。電力会社には、国策の呪縛から解放され、健全な経営者の感覚を取り戻してもらいたいと思う。

【新エネルギーシステム開発の最大のチャンス】
冷静に現状を見れば
○原子力発電の原理的欠陥が誰の目にも明らかになった
○電力各社は、原子力発電は民間では荷が重すぎると内心思い始めている(多分)
○現在、全国で54基ある原発のうち、稼働しているのは半分に過ぎない
○節電意識が浸透し、国民の多数がやる気になっている
今が、原発廃止を宣言する絶好の機会のように感じるのだが、どうか?

考えられる新エネルギーシステムとしては
○太陽光発電、風力発電、地熱発電、潮汐力発電、波力発電などが考えられるが、単独では原子力にかなわない。あらゆる手段を総動員するつもりが肝要だ。
○ピーク電力を平準化するために、夜間電力の活用、休日分散が考えられる。
○冷暖房では、冷やしすぎ温めすぎを回避するため、全館にセンサーを多用した効率的な使用法も検討課題だ
単なる節電・節約では、快適さが失われてしまう、効率よくエネルギーを使用する工夫が必要だ。
原子力発電所の稼働状況(2011.4.24)
北海道電力・泊(北海道)
1号機 57.9万kW 定期検査中 再稼働に注目
2号機 57.9万kW 運転中
3号機 91.2万kW 運転中
東北電力・女川(宮城)
1号機 52.4万kW 停止中
2号機 82.5万kW 停止中
3号機 82.5万kW 停止中
東北電力・東通(青森)
1号機 110.0万kW 定期検査中 再稼働に注目
東京電力・福島第一(福島)
1号機 46.0万kW 停止中 廃炉
2号機 78.4万kW 停止中 廃炉
3号機 78.4万kW 停止中 廃炉
4号機 78.4万kW 停止中 廃炉
5号機 78.4万kW 停止中 廃炉
6号機 110.0万kW 停止中 廃炉
東京電力・福島第二(福島)
1号機 110.0万kW 停止中
2号機 110.0万kW 停止中
3号機 110.0万kW 停止中
4号機 110.0万kW 停止中
東京電力・柏崎刈羽(新潟)
1号機 110.0万kW 運転中
2号機 110.0万kW 停止中
3号機 110.0万kW 停止中
4号機 110.0万kW 停止中
5号機 110.0万kW 運転中
6号機 135.6万kW 運転中
7号機 135.6万kW 運転中
日本原電・東海第二(茨城)
1号機 110.0万kW 停止中
日本原電・敦賀(福井)
1号機 35.7万kW 定期検査中 再稼働に注目
2号機 116.0万kW 運転中
中部電力・浜岡(静岡)
3号機 110.0万kW 定期検査中 再稼働に注目
4号機 113.7万kW 運転中
5号機 138.0万kW 運転中
北陸電力・志賀(石川)
1号機 54.0万kW 停止中
2号機 135.8万kW 定期検査中 再稼働に注目
関西電力・美浜(福井)
1号機 34.0万kW 定期検査中 再稼働に注目
2号機 50.0万kW 運転中
3号機 82.6万kW 運転中
関西電力・大飯(福井)
1号機 117.5万kW 運転中
2号機 117.5万kW 運転中
3号機 118.0万kW 定期検査中 再稼働に注目
4号機 118.0万kW 運転中
関西電力・高浜(福井)
1号機 82.6万kW 定期検査中 再稼働に注目
2号機 82.6万kW 運転中
3号機 87.0万kW 運転中
4号機 87.0万kW 運転中
中国電力・島根(島根)
1号機 46.0万kW 定期検査中 再稼働に注目
2号機 82.0万kW 運転中
四国電力・伊方(愛媛)
1号機 56.6万kW 運転中
2号機 56.6万kW 運転中
3号機 89.0万kW 運転中
九州電力・玄海(佐賀)
1号機 55.9万kW 運転中
2号機 55.9万kW 定期検査中 再稼働に注目
3号機 118.0万kW 定期検査中 再稼働に注目
4号機 118.0万kW 運転中
九州電力・川内(鹿児島)
1号機 89.0万kW 運転中
2号機 89.0万kW 運転中


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