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原子力発電のゆくえ(2)〜(5)

2012年3月16日(金)
原子力発電のゆくえ(5)
間もなく、原子力発電再稼働に一つの判断が下される

[ストレス評価と原発再稼働]
原子力発電所の事故から一年が経過した、ほとんどの原発は稼働を停止したまま、ストレステストの評価待ちという状態である。2月13日に、原子力安全・保安院は原子力安全委員会に対して「福井県関西電力大飯原発3・4号機」のストレステストは妥当である旨、報告した(1次評価)。間もなく、原子力安全委員会も、1次評価としては妥当であるとの確認コメントを出す段取りと、マスメディアは報じている。

しかし、3月14日の参議院予算委員会の質疑では
【斑目原子力安全委員会委員長】
総合的な安全評価には、1次評価だけでは不十分で、2次評価まで必要
【野田総理】
1次評価で安全が確認されれば、大飯原発3・4号機の再稼働は政治判断になる

どうして、政府内で議論がかみ合わないのか、斑目氏は専門家としての主張だろうし、野田総理は実務家として電力需要家の期待に応えたものと考えられる。しかし、このパターンは、原発導入当初からあった、その危険性から導入慎重を唱える専門家に対し、大量のエネルギーを手っ取り早く手に入れたい需要家があり、明確な合意のないまま、ズルズルと大量の原発が出来てしまった経緯である。1965年東海村で英国製のコルダーホール型原子炉が臨界に達して以来、46年間も過酷事故がなく、なんとなく「日本の原子力発電は安全である」という神話が生まれてしまった。

いままでは、原子力安全・保安院や原子力安全委員会は、政府の機関であり、その結論も、政府の意向に沿ったもののはずであった。しかし、なぜ斑目氏は反旗を翻したように見えるのだろうか? 先週には、委員長の辞意も表明しているのだ。このまま行けば、野田総理が「大飯原発3・4号機の再稼働」を政治決断し、斑目氏は「原子力安全委員会委員長を辞任」ということになりそうである。斑目氏は切りの良いところで、辞めたいと言っているようである、原子力規制庁も4月に発足するし、そのような言い方も、あるのかも知れない。しかし、この斑目氏の心変わり、「相当な覚悟」であると見ることも出来る。

昨年3月12日、福島第一原発に向かうへりの中で、斑目氏は菅総理に「格納容器内での水素爆発はあり得ません」とのアドバイスを行ったが、その日のうちに、建屋での水素爆発が起こってしまった。この日のことを、斑目氏は「自分の実力のなさ、しかし、あの段階で、建屋の水素爆発を予測できた人は多くはない」と述懐している(当時のNHKTV)。こんどこそ、政府に対して、的確なアドバイスをと思ったのかも知れない。

原子力発電産業は、一つの大きな産業となっており、稼働停止には、大きな抵抗が予想される。しかし、原子力発電には、『原子力発電を安全に停止するには「ウランの核分裂反応を止める、核分裂生成物の崩壊熱を除去する」という、二つの停止装置が必要。そして、これらの停止装置が故障・破壊する可能性は、十分あり得ると考えられている、もし万一、故障・破壊という事態に立ち至った場合、福島のような取り返しのつかない事故になる。』というリスクが存在する。将来、優れた制御技術が開発されると、原発を安全に運転できると言う人もいるが、どうか?

政府は安易に原発を再稼働させないで欲しいし、その他のエネルギー開発(火力を含めて)を急いで欲しいと思う。もっとも、政府が再稼働を政治決断したとしても、地域住民の了解が取れるかは楽観は出来ないのだが...

2011年6月28日(火)
原子力発電のゆくえ(4)
脱原発、原発維持どちらが多数を形成するか?

【脱原発の主張】
  1. 原発は運転を停止したとき、引き続き冷却を継続しなければならない
  2. なんらかの事故で、冷却機能を失ったとき放射性物質汚染の危険がある
  3. 従って、首都圏など人口密集地には原発立地できない
  4. 使用済み核燃料の最終的な受け入れ先が見つからない
  5. 原発に向けていた資金を、自然エネルギー開発に振り向けるべき
【原発維持の主張】
  1. 産業・質の高い生活を維持するためには、大量で効率的なエネルギー生産システムが必要
  2. 福島で事故が起こっても、それによって、まだ人が死んだわけではない
  3. 最悪、福島の事故程度なら、過疎地に原発を立地するのはリスク管理として当然である
  4. 自然エネルギーでは、大量で効率的なエネルギーが得られないので、産業は海外に逃げて行くだろう、生活の質も落ちる
脱原発の主張は、福島原発事故(3/11)以来、当「Internet Walk」の主張でもある。原発維持の主張の内、2と3は、最近会った友人2人の主張だが、私にはとても受け入れられない、残念な主張である。

原発維持の主張の内、1と4の懸念は当然で、脱原発を主張しても1と4については、工夫が必要である。

どちらの主張が多数を形成するのか、これから秋にかけての注目点になる...ドイツのメルケル首相、日本の菅首相、どちらも物理の出身だが、リーダーシップとインテリジェンスが問われる。日本では、秋にも解散総選挙があるのだろうか?


2011年6月9日(木)
原子力発電のゆくえ(3)
夏場の電力不足は、消費を活性化させ、住環境を改善するという説

東電の供給力は、7月末:5380万kW、8月末:5480万kW であり、停電を避けるため様々な節電の工夫が進行中です。これが、大震災で沈滞していた消費を活性化させるとしたら、電力不足も悪いことばかりではないと思います。
電力使用状況グラフ(東京電力サイト)

○冷房温度を上げれば、サラサラした下着が売れる、清涼飲料水やアイスクリームが売れる、扇風機が売れる、保冷剤が売れる。夏の強い日差しを緩和するために、緑のカーテンが注目される。舗装道路の照り返し緩和のため、側溝を開渠にして清水が流されるかもしれない。
○電車の間引き運転に、自転車で対抗すれば、自転車が売れる。昼間の電気使用を避けるため、夜間電力を貯める蓄電器が売れる、省エネ家電もますます売れる。各企業バラバラのサマータイム導入で、託児所にビジネスチャンスがある、退勤後をにらめば居酒屋・レストランやスポーツジムにも追い風が吹く。
○休日がバラバラになると言うことは、土日だけの客しか見込めなかった行楽地・温泉業界にビジネスの幅が広がる。

電力が限定的になれば、企業の生産活動も、個人のライフスタイルも変わらざるを得ませんね。また一方で、電力会社がそれしか電力を作れないのだったら、必要な電力は自分で作るという発想がますます浸透し、個人でも企業でも、太陽光発電・風力発電・水力発電で電力を作るという、電力分散社会が実現されるかもしれません。
新しい時代の到来の予感がするのですが...

2011年5月7日(土)
原子力発電のゆくえ(2)
浜岡原子力発電所の運転停止要請に中部電力は?

5月6日菅首相が中部電力に浜岡原子力発電所の運転停止を要請
その理由として、菅首相は
1.万一、浜岡原発で事故が起これば地域のみならず、日本社会に甚大な影響を与える
2.この地域は、東海地震の想定震源域で30年の間にM8クラスの地震が起こる可能性が87%
をあげています、この中では、[浜岡原発事故]→[日本社会に甚大な影響]という点で画期的と思います。つまり、浜岡原発事故防止対策には、確率論ではなく「ゼロリスク」が必要と言っているようですね。「ゼロリスク」と言えば、大地震や大津波はもちろんですが、テロ・航空機衝突・隕石落下・ヒューマンエラー等々、想定外のことがヤマ程あります。防潮堤だけでも、2年がかりという報道もありますから、「ゼロリスク」までには、さらに時間が必要かと。中部電力の対応が注目されますが、「ここでお金と時間をかけるくらいなら、新エネルギーに投資した方が生産的」と考えるかもしれません、注目です。




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